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「記帳代行 単価」で検索すると、相場の一覧はいくらでも出てきます。ところが、開業したての自分が明日から使える「決め方」になると、途端に見つからなくなります。相場の幅が広すぎて、自分の料金表のどこに置けばいいのか分からないからです。
筆者は2026年2月に開業した税理士です。開業準備期間に記帳代行とスポット業務を含む料金表を作り、現在までそのまま実運用しています。この記事では、その料金表を「どういう構造で組み立てたか」に絞って公開します。金額の実額は本記事では扱いません。実額(記帳代行の月額や、毎月の収支)はnoteで公開しています。
記帳代行の単価は「1仕訳いくら」で決めるべき?

結論からいうと、筆者は「1仕訳いくら」の単価方式では設定していません。一定の仕訳数ごとに料金が一段上がる、階段型のレンジ定額にしています。単価を1円単位で決めるより、レンジの刻み方を決めるほうが、ひとり事務所の運用に合っているからです。
記帳代行とは、顧問先に代わって領収書や通帳などの資料から会計帳簿への入力(仕訳の登録)を行う業務のことです。作業量が仕訳の件数にほぼ比例するため、料金も仕訳数と連動させるのが自然です。問題は、その連動のさせ方でした。
1仕訳単価の方式は一見わかりやすいのですが、実際に運用すると、毎月仕訳数を数えて掛け算し、月ごとに細かく違う金額を請求する運びになります。ひとり事務所でこの計算と説明を毎月やるのは、確実に手間になります。レンジ定額なら、月々の多少の増減では請求額が動かず、見積もりも「このレンジならこの金額」で一瞬で終わります。
単価そのものを悩む前に、「数える運用を毎月続けられるか」を先に考えるのが実務的です。
なお、水準を相場より高めに置くという考え方は、料金表全体の設計として顧問料の記事に書きました。
→ 関連記事:顧問料はいくらにする?料金表の作り方
1仕訳単価を精密に決めても、毎月の集計運用が続かなければ料金表として機能しません。
※本記事の内容は2026年8月時点の筆者の料金設計です。
値決めで消耗するのは金額の判断より、毎月の運用です。運用が軽い構造を先に選びました。
記帳代行は顧問料に含める?分ける?
筆者は顧問料に含めず、記帳代行を別料金として分けています。含めてしまうと、記帳を自分でやる顧問先が損をするからです。同じ顧問料なのに、こちらの作業量はまったく違う。この不公平は、いずれ必ず問題になります。
分けておけば、顧問先は「自分で入力すれば月額が下がる」と自分で判断できます。これはクラウド会計を入れて自計化を進めてもらう動機にもなり、結果としてこちらの作業も減ります。口頭で「自計化しませんか」と説得するのではなく、料金の分け方そのものが顧問先の行動を変えるという設計です。
料金の分け方は、単なる値付けではなく「顧問先にどちらを選んでほしいか」の意思表示です。
記帳代行を顧問料に溶かし込むと、自計化を頑張る顧問先ほど割高になるという逆転が起きます。
この分離設計を実額でどう置いたか、そして記帳代行が売上に占める割合や毎月の収支がどうなっているかは、noteで数字をそのまま公開しています。
分けたことで、こちらから自計化をお願いする場面はほとんどなくなりました。価格が代わりに説明してくれます。
開業初年度の売上と経費を実額で公開
スポット業務の料金はどう設計する?

スポット業務の料金は、「基本報酬+加算報酬」の2階建てで設計しています。業務の種類ごとにベースとなる定額を置き、追加の手間は件数や枚数など数えられる単位で積み上げる構造です。
スポット業務とは、顧問契約を伴わない単発の業務のことです。確定申告の代行や税務相談などが典型で、筆者の開業前半の売上の柱もこのスポット業務でした。その実録は開業半年のまとめ記事に書いています。
→ 関連記事:税理士開業のリアル【開業半年の実録】売上・営業・失敗談まとめ
スポットの値付けが難しいのは、案件ごとの作業量の振れ幅が大きいからです。一律の定額にすると重い案件で赤字になり、全部を個別見積もりにすると依頼のハードルが上がります。2階建てにすると、ベースで入口を明示しつつ、手間が増える要素は加算で回収できます。
| 設計要素 | 決め方 | 狙い |
|---|---|---|
| 基本報酬 | 業務の種類ごとに定額を置く | 見積もりの起点を固定し、入口の金額を明示する |
| 加算報酬 | 追加の手間を数えられる単位(件数・枚数など)に分解して積む | 「なぜこの金額か」を作業量で説明できる |
| 対象外の明示 | 受けない業務を先に決めて料金表に載せない | 断る場面でその都度理由を考えなくて済む |
受けるスポット業務を書き出す
業務ごとに基本報酬の単位を決める
追加の手間を、数えられる単位に分解して加算報酬にする
下限表示と見積もり条項を置いて、例外案件に備える
加算の単位を「数えられるもの」に揃えておくと、金額の説明が交渉ではなく計算になります。
振れ幅の大きいスポット業務を一律定額にすると、重い案件を受けるたびに赤字が確定します。
2階建てにしてから、見積もりの場で金額の理由を聞かれて困ったことは一度もありません。
「◯円〜」と「別途お見積り」はどう使い分ける?
使い分けの基準は、作業量の振れ幅が事前に読めるかどうかです。振れ幅が読める業務は「◯円〜」の下限表示、資料を見ないと作業量がまったく読めない業務は「別途お見積り」に逃がしています。
下限表示には、目安を伝える以上の意味があります。「これ未満の金額では受けない」という意思表示です。料金表に下限を書いておけば、その水準を下回る値引き交渉は、交渉が始まる前に終わります。一方で、内容次第で作業量が何倍にも変わる業務にまで下限を書くと、その数字が独り歩きして「表に書いてあった金額でやってほしい」という期待とのズレを生みます。読めないものは、最初から見積もりに回すほうが誠実です。
「◯円〜」は目安の提示であると同時に、「これ未満では受けない」という下限の宣言です。
すべてを定額にして例外案件を抱え込むより、読めない業務は見積もりに逃がすほうが安全です。
「〜」の一文字に、値引き交渉を入口で止める仕事をしてもらっています。
スポットの未回収と期限間際リスクはどう防ぐ?

筆者はスポット業務を原則前払い制にし、入金の確認後に業務を開始しています。あわせて、申告期限が迫っている案件は追加報酬をいただくか、内容によってはお受けしない旨を料金表に明記しています。
顧問契約と違い、スポット業務には継続的な関係がありません。納品後に連絡が取れなくなるリスクは、顧問とは構造的に別物です。前払いは失礼な要求ではなく、「見積もり提示→入金→着手」という順序を最初に案内するだけの話で、この順序で依頼者とトラブルになったことはありません。
期限間際の案件を通常料金で受けない理由は2つあります。短期間での作業は確認の時間が削られて品質のリスクが上がること、そして既存の顧問先に向けるべき時間を奪うことです。料金表に条項として書いておけば、断る場面でその都度悩まずに済みます。
また、受けない業務そのものも先に決めて明記しています。筆者の場合は3つです。
前払いと期限間際条項は、料金ではなく「時間と品質を守るためのルール」です。
継続関係のないスポット業務を後払いで受けるのは、回収リスクを自分から引き受ける行為です。
条件を先に書いておくと、断るときに角が立ちません。「料金表にこう定めています」で会話が終わります。
記帳代行の単価の相場はいくらですか?
事務所ごとの幅が非常に大きく、相場から逆算する決め方はおすすめしません。ひとり事務所が対応できる時間には上限があるため、相場ではなく「自分の時間をいくらで売るか」から決めるのが筆者の考え方です。実額は本記事では扱わず、noteで公開しています。
スポット業務を安く受けて、顧問契約につなげる戦略は有効ですか?
スポットが顧問契約の入口になるのは事実で、筆者の顧問契約にもスポットから移行したものがあります。ただし、そのために安くする必要はありません。安く受けた1件目の金額は、その後の継続契約の基準として固定されます。
前払いをお願いするのは失礼になりませんか?
筆者の経験では問題になっていません。依頼を受けた時点で「お見積もりをご案内し、ご入金の確認後に着手します」と順序を先に伝えるだけです。順序が明確なほうが、依頼者にとっても安心材料になります。
実際の金額はどこで見られますか?
筆者の実額(記帳代行の月額、売上の構成、毎月の収支)は、開業半年の数字をまとめたnoteですべて公開しています。記事末のリンクからどうぞ。
まとめ|記帳代行・スポット業務の単価は「構造」で決める
記帳代行・スポット業務の単価は、金額そのものを悩む前に、構造から決めるのが筆者の結論です。記帳代行は1仕訳単価ではなくレンジ定額にし、顧問料からは分離する。スポット業務は基本報酬+加算報酬の2階建てにして、読めない業務は見積もりに逃がす。前払い制と期限間際条項、そして受けない業務の明記で、時間と品質を守る。この構造さえ決まれば、金額の当てはめは半日で終わります。
料金表全体(顧問料と決算報酬)の設計は、こちらの記事とあわせて読むと全体像がつながります。
→ 関連記事:顧問料はいくらにする?料金表の作り方
そして、この構造に筆者が実際にいくらを当てはめたのか。記帳代行の月額、売上に占める割合、毎月の収支までの実額は、noteで公開しています。
開業初年度の売上と経費を実額で公開