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税理士業務用のパソコンを、メモリ8GBで済ませられないか。開業前後で少しでも初期投資を抑えたい時期なら、一度は考えることだと思います。
結論から言えば、筆者は8GBを積極的にはおすすめしません。ただし「絶対にダメ」という話でもありません。この記事では、会計ソフト各社と国税庁・eLTAXが公表している動作環境と、筆者自身が8GB機から買い替えた経緯をもとに、できる業務ときつい業務を切り分けます。
メモリ8GBで税理士業務はできる?

結論から書きます。開業税理士のメイン機として、メモリ8GBは基本的におすすめしません。ただし用途を絞れば成立する場面もあり、「今すぐ買い替えるべき」とも限りません。判断の分かれ目は、Windows環境をどう確保するかという一点に集約されます。
その理由を、公式情報と筆者の経験の両方から順に見ていきます。ただしその前に、この記事の前提をはっきりさせておきます。
「8GBで実務をやってみた」とは書けないので、書ける範囲だけで正直に書きます。
そもそもメモリ8GBとは?ストレージとの違いは?

メモリとは、パソコンが作業中のデータを一時的に置いておく場所のことです。よく「作業机の広さ」にたとえられます。8GBという数字は、その机の広さを表しています。
ここを混同したまま買ってしまう人が意外に多いので、先に整理しておきます。
メモリとSSD(ストレージ)は役割がまったく違う
SSDは書類をしまっておく引き出しで、メモリは書類を広げる机です。引き出しが大きくても机が狭ければ、複数の書類を同時に広げられません。逆に机が広くても引き出しが小さければ、しまえる量が足りなくなります。
会計ソフトが重いと感じたとき、SSDの空き容量を増やしても改善しないことがあるのは、原因が机の側にあるからです。
8GBのうち、実際に作業に使えるのはいくらか
ここが8GB問題の核心です。8GBはすべてが自分の作業に使えるわけではありません。OS自体が常に一定量を使い続けており、セキュリティソフトやクラウドストレージの同期アプリなども、起動しているだけでメモリを消費します。
つまり実際に自分の作業へ回せるのは、8GBよりかなり少ないということです。この差が、カタログスペックと体感のズレを生みます。
会計ソフトの公式動作環境は8GBを求めている?

意外に思われるかもしれませんが、求めていません。主要な会計ソフトと電子申告システムが公表しているメモリ要件は、いずれも4GB以上です。数字だけ見れば、8GBは倍の余裕があることになります。
2026年7月時点で各社が公表している動作環境を整理すると、次のとおりです。
※表は横にスクロールできます。
| ソフト・システム | 公式のメモリ要件 | 対応OS | 出典 |
|---|---|---|---|
| 弥生会計 26(デスクトップ) | 4GB以上 | Windows 11のみ | https://www.yayoi-kk.co.jp/products/spec/ |
| freee会計 | 記載なし(ブラウザ・OSのみ規定) | Windows/macOS | support.freee.co.jp |
| マネーフォワード クラウド会計・確定申告 | 記載なし(ブラウザ・OSのみ規定) | Windows/macOS | biz.moneyforward.com |
| e-Taxソフト(ダウンロード版) | 記載なし | Windows 11のみ(Macは利用不可) | https://www.e-tax.nta.go.jp/download/e-taxSoftDownLoad.htm |
| eLTAX PCdesk(DL版) | 4GB以上 | Windows 11(64bit)のみ | https://www.eltax.lta.go.jp/eltax/junbi/pckankyou/ |
| eLTAX PCdesk(WEB版) | Windows 4GB以上/Mac 2GB以上 | Windows/macOS | 同上 |
この表から読み取れることは、ひとつです。公式が求めているのは「ソフト単体を動かすための最低限」であって、実務の同時進行を前提にした数字ではないということ。
だからこそ、次の問いが本題になります。公式が4GBで足りると言っているのに、なぜ8GBで詰まるのか。
8GBで問題なくできる税理士業務は?
まず、できることをはっきりさせておきます。8GB機がまったく使い物にならないという話ではありません。用途を絞れば、十分に実用になる領域があります。
- クラウド会計ソフトへの記帳入力(ブラウザのタブを絞った状態で)
- 受け取った資料のPDF閲覧・確認
- メール、チャット、スケジュール管理
- Word・Excelでの一般的な書類作成
- Web会議への参加(他のアプリを閉じた状態で)
いずれも、ひとつの作業に集中している限りは8GBでも成立します。裏を返せば、8GBの限界は「ソフトの重さ」ではなく「同時に開く数」で決まる、ということです。
8GB機を持っている方は、まず自分が普段いくつのアプリを同時に開いているか数えてみてください。
筆者がM1 MacBook Air(8GB)で詰まったのはどこか

ここからは筆者自身の経験です。受験生時代のメイン機はM1 MacBook Air(ユニファイドメモリ8GB)でした。そして開業と同時に、これを買い替えています。
税理士業務ではなく、ブログ運営でもたつき始めた
正直に書きます。買い替えを決めた直接のきっかけは、税理士業務ではありませんでした。受験ブログ(unchain-tax.com)の運営です。
ブラウザで管理画面を開き、参考記事のタブをいくつか並べ、画像を加工しながら書く。作業としては決して重い部類ではないはずですが、その程度で動作のもたつきを感じる場面が出てきました。
この経験から言えること・言えないこと
ここは慎重に線を引きます。
- 言えること:ブラウザ中心の軽作業であっても、タブとアプリが増えれば8GBは苦しくなる。これは実体験です
- 言えないこと:その8GB機で申告ソフトやParallelsを動かしたわけではないので、税理士実務での限界を実測したとは言えません
そのうえで、ブログを書くだけでも詰まったのだから、税理士業務ならなおさら余裕はない——これがこの記事の推論のすべてです。断定ではなく推論として受け取ってください。
e-Tax・eLTAXを使うなら8GBはどうなる?

ここが、8GBをおすすめしない最大の理由です。税理士業務には、Windows環境を確保しないと成立しない領域があります。そしてMacでそれをやろうとすると、メモリ要求が一気に跳ね上がります。
公式が「Macでは使えない」と明記している
国税庁は、e-Taxソフト(ダウンロード版)の推奨環境をWindows 11のみとしたうえで、Mac OSではe-Taxソフトを利用できないと明記しています。eLTAXのPCdesk(DL版)も動作環境はWindows 11(64bit)のみで、Mac向けの記載自体がありません。
PCdesk(WEB版)はmacOSにも対応していますが、eLTAX公式は「MacOSを利用される場合は、利用可能な証明書が限られます」と注記しています。Macだけで完結させにくい構造になっている、ということです。
Parallelsで動かすWindowsは、それだけで6.78GBを消費していた
筆者はMac上でParallels Desktopを使い、e-Tax・eLTAX用のWindows環境を動かしています。ここは実使用です。
下は筆者のMac mini M4(物理メモリ24GB)のアクティビティモニタです。Parallels上のWindows 11だけで6.78GBを消費していました。物理24GBに対して使用済み21.02GB、スワップ使用領域は14.41GBに達しています。
Parallels Desktopの公式ドキュメントによれば、Standard Editionで作成・実行する仮想マシンには4 vCPUコア・8GB vRAMという上限が設けられています(docs.parallels.com)。仮想マシン側に8GBを割り当てられるとしても、その裏でmacOS本体も動き続けます。
物理メモリ8GBのMacで仮想Windowsを動かす構成は、現実的ではありません
なお弥生は、システム要件のなかで仮想環境での利用について技術的なサポートの対象外としています。Mac+仮想環境で弥生を使う選択には、この制約も付いてきます。
「Windows機を別に1台持つ」という選択が現実的なのは、こういう事情があるからです。
MacとWindowsで「8GB」の意味は同じ?
同じではない、という説明をよく見かけます。ただし「Macの8GBはWindowsの16GB相当」といった換算は、各社が公式に保証している数値ではありません。本記事では、公式に確認できない断定は採用しません。
確実に言えるのは、OSもアプリも年々メモリを多く使う方向に進んでいる、ということだけです。MacかWindowsかにかかわらず、8GBは余裕のある選択肢ではなくなっています。
MacとWindowsの選び方そのものは、別記事で詳しく整理しています。
→ 税理士のPCはMacとWindowsどっち?両方使った結論
後から増やせない機種が多い
見落とされがちですが、これが8GB選択で最も怖い点です。Apple siliconのMacはメモリがチップに統合されており、購入後の増設はできません。Windowsの薄型ノートでも、メモリが基板に直付けされていて増設不可の機種が増えています。
メモリだけは、買ったあとで取り返しがつかないと考えておいたほうが安全です。
今8GB機を使っている人ができる対処法は?
すでに8GB機を持っている場合、いきなり買い替える必要はありません。先にできることがあります。
常駐アプリを見直す
起動時に自動で立ち上がるアプリを確認し、使っていないものを外します。クラウドストレージの同期アプリを複数入れている場合は、特に効果が出やすい部分です。
ブラウザの拡張機能を整理する
拡張機能はひとつずつがメモリを消費します。使っていないものを無効化するだけで体感が変わることがあります。
タブの開きっぱなしをやめる
作業が終わったタブを閉じる習慣をつけます。8GB機では、これが最も即効性のある対処です。
外部ディスプレイ接続時の負荷を意識する
画面が増えれば描画の負荷も増えます。8GB機で高解像度の外部ディスプレイを使う場合は、同時に開くアプリを絞ってください。
増設できる機種かどうかを確認する
Windowsのノートやデスクトップであれば、増設できる機種もあります。買い替える前に、まず自分の機種の仕様を確認しましょう。
モニター構成そのものの考え方は、別記事で解説しています。
→ 税理士のモニター比較|サイズ・解像度・枚数別のおすすめ構成
ただし、増設できる機種だとしても、2026年前半はメモリの価格が大きく上がっている点に注意が必要です。PC Watchの価格調査によると、DDR5-5600の16GB×2枚(合計32GB)は安かった頃と比べておよそ5.3倍、11万円以上の値上がりとなりました。2026年1月後半には値動きがほぼ横ばいに転じたものの、供給が戻るまでには少なくとも1年以上かかるとみられています(出典:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/2082553.html/2026年7月時点で確認)。「増設すれば安く済む」という前提は、いまは成り立ちにくくなっています。
8GBを選んでいい人・16GBにすべき人
ここまでの内容を、判断基準としてまとめます。
そのうえで、8GB機を選ぶ場合に満たしておきたい条件を3タイプに整理しました。
ただし、この価格帯は正直に言って地雷が多い領域です。探す前に、次の5点だけ頭に入れておいてください。
※表は横にスクロールできます。
| タイプ | CPUの目安 | ストレージ | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ①持ち運び重視(13〜14型) | Core i5/Ryzen 5クラス | 256GB以上 | 外出先での確認・入力が中心 |
| ②据置メイン(15.6型・テンキー付) | Core i5/Ryzen 5クラス | 256GB以上 | 自宅事務所で腰を据えて使う |
| ③予算最優先 | Core i3/Ryzen 3クラス以上 | 256GB以上 | サブ機・つなぎとして割り切る |
据置メインなら本来は512GBが欲しいところですが、8GBの価格帯では現実的に256GBが中心になります。足りなくなったら外付けSSDやクラウドで補う前提で選んでください。
この記事で具体的な機種を紹介していない理由
お気づきかもしれませんが、この記事には8GB機の商品リンクをひとつも置いていません。理由を正直に書いておきます。
調べた範囲では、自信を持っておすすめできる8GB機が見つからなかったためです
執筆時点で「新品・8GB・SSD256GB」という条件で探すと、上位に並ぶのは次のような製品でした。
- CPUがCeleronクラスで、キーボードが海外配列のノーブランド製品
- 本体は中古で、SSDだけを新品に交換した整備済み品
そして同じ価格帯を少し上まで見ると、大手メーカーの整備済み品で、Core i5・16GB・SSD512GB・テンキー付きという構成が並んでいました。新品のノーブランド8GB機より、そちらのほうが業務向きに見えるのが現状です。
紹介できる機種がないのに無理に紹介するのは、この記事の趣旨に反します。条件だけをお渡しするので、あとはご自身の目で確かめてください。
最後にひとつだけ、正直に付け加えます。2026年現在、8GB機と16GB機の価格差は以前ほど大きくありません。もし予算があと少し伸ばせるなら、迷わず16GBを選んでください。長く使うほど、その差は小さくなります。
→ コスパ最強はメモリ16GB|開業税理士におすすめのPC具体機種
なお、申告ソフトの複数起動や仮想環境を常用するなど、24GB以上が必要になるケースについては別記事で解説予定です。
会計ソフトの公式動作環境が4GB以上なら、8GBで足りるのでは?
ソフト単体を動かす分には足ります。ただし公式の要件は、ブラウザ・PDF・Excel・Web会議などを同時に開く実務の状況を前提にした数字ではありません。8GBが苦しくなるのは、ソフトの重さではなく同時に開く数が原因です。
クラウド会計だけならメモリは少なくていい?
クラウド会計はブラウザ上で動くため、負荷はブラウザ側にかかります。タブを絞れば8GBでも動きますが、タブを多く開く使い方をするなら16GB以上が安心です。
MacでもWindowsの税務ソフトは使えますか?
国税庁は、e-Taxソフト(ダウンロード版)についてMac OSでは利用できないと明記しています。eLTAXのPCdesk(DL版)もWindows専用です。Macで完結させるには制約があるため、仮想環境か別のWindows機が必要になります。
8GBのMacでParallelsは動きますか?
起動自体はできても、実用的とは言えません。筆者の環境ではParallels上のWindows 11だけで6.78GBを消費していました。macOS本体の分も必要になるため、物理8GBでは足りません。
今使っている8GB機は今すぐ買い替えるべきですか?
その必要はありません。常駐アプリの整理やタブの運用を見直すだけで改善する場合があります。それでも作業が止まるようになったときが、買い替えの検討時期です。
まとめ|メモリ8GBで税理士業務はできるか
メモリ8GBで税理士業務ができるかという問いへの答えは、「用途を絞れば成立するが、メイン機としてはおすすめしない」です。
会計ソフト各社が公式に求めているメモリは4GB以上であり、数字の上では8GBに余裕があります。それでも詰まるのは、実務が常に複数のアプリを同時に開く形で進むからです。加えてe-Tax・eLTAXはWindows環境を前提としており、Macで仮想環境を立てるなら8GBでは足りません。
筆者自身、受験生時代にM1 MacBook Air(8GB)を使い、ブログ運営の作業だけでもたつきを感じて買い替えました。その経験から言えるのは、8GBは「動かない」のではなく「余裕がない」ということです。
初期投資を抑えたい気持ちはよくわかります。それでも、あと少し予算を伸ばせるなら16GBを選んでください。メモリだけは、後から取り返しがつきません。
※本記事の動作環境・仕様は2026年7月時点で各社公式ページを確認したものです。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。