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税理士として開業するとき、最初に決めなければならないのが「事務所をどこに構えるか」です。自宅開業・賃貸事務所・シェアオフィスの3つの選択肢があり、それぞれ費用も働き方も大きく変わります。
「自宅開業は安く済むけど、住所が公開されるのが怖い」「シェアオフィスで税理士登録はできるの?」――筆者も開業前、まさに同じことで悩みました。
この記事では、実際に自宅開業を選んだ開業税理士である筆者が、3つの選択肢の違いと、自宅開業のデメリット・その対策(住所・電話番号の公開範囲を留める手続き)まで、実体験ベースで解説します。
税理士の開業場所は3択?自宅・賃貸・シェアオフィスの違いとは

結論から言うと、税理士の開業場所は「自宅開業」「賃貸事務所」「シェアオフィス(レンタルオフィス含む)」の3択に整理できます。そして、ひとりで開業してオンライン相談を軸にするなら、固定費が最も小さい自宅開業が有力な選択肢になります。
自宅開業とは、自宅の一部を事務所として税理士登録し、そこを業務の拠点にする形態のことです。税理士は税理士法第40条により事務所の設置が義務付けられており、どの形態を選ぶ場合でも、税理士名簿に登録する「事務所所在地」を1か所決める必要があります(事務所を2か所以上設けることはできません)。
3つの選択肢をざっくり比較すると、次のとおりです。
| 比較軸 | 自宅開業 | 賃貸事務所 | シェアオフィス |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | ほぼゼロ | 敷金・礼金・内装等で数十万円〜 | 入会金等で数万円〜 |
| 毎月の固定費 | 実質増加なし(家賃は既存) | 家賃+光熱費で数万〜十数万円 | 利用料で1〜数万円程度 |
| 自宅住所の公開 | 対策しないと公開される | 事務所住所のみ公開 | 施設住所のみ公開 |
| 来客対応 | 工夫が必要 | しやすい | 会議室予約制が多い |
| 税理士登録 | 可能 | 可能 | 施設・税理士会への事前確認が必須 |
※費用はいずれも一般的な目安です(2026年7月時点)。地域・物件により大きく異なります。
開業直後の売上が読めない時期に、毎月の固定費をどこまで背負うかが、この3択の本質です。
筆者は「固定費は限界まで軽く」の一点で自宅開業を選びました。結果、開業初期の資金的なプレッシャーがかなり違ったと感じています。
税理士の自宅開業のデメリットは?【筆者は自宅開業です】

結論として、自宅開業の最大のデメリットは「自宅住所・電話番号が公開されること」と「仕事とプライベートの境目がなくなること」の2つです。ただし前者は手続きで大きく緩和でき、後者は性格との相性の問題です。筆者はひとり税理士・オンライン相談メインという働き方なので、それでも自宅開業を選んで正解だったと考えています。
住所・電話番号はどこまで公開される?【依頼書で公開範囲を変更できる】
税理士情報検索サイトとは、日本税理士会連合会(日税連)が運営する、全国の税理士・税理士法人の氏名や事務所所在地等を誰でも検索できるサイトのことです。税理士登録をすると、事務所所在地と電話番号がこのサイトに掲載されます。自宅開業の場合、対策をしなければ自宅の住所と電話番号がそのままインターネット上に公開されることになります。
筆者の実体験ですが、検索サイトに掲載された直後から営業電話がかかってきました。「掲載された瞬間に来た」というのが正直な体感です。
ただし、これには対策があります。自宅兼事務所の場合、税理士情報検索サイトの掲載情報は、本人の申請により表示範囲を変更できます(2026年7月時点)。
筆者は依頼書を提出する方法で、住所の表示を市までに留め、電話番号を非表示にしました。書き方は税理士会の事務局の方が丁寧に教えてくれたので、迷ったら事務局に相談するのが早いです。様式や提出先は変わる可能性があるため、最新の情報は所属(予定)の税理士会または日税連に確認してください。
参考:税理士情報検索サイト https://www.zeirishikensaku.jp/
なお筆者は現在、住所・電話番号とも顧問先にのみ開示する運用にしています。オンライン相談がメインであれば、これで業務上の支障はありません。営業電話・営業DM対策としても非常に有効でした。
セキュリティが気になるなら「住まい選び」から逆算する
それでも「自宅が特定される可能性がゼロではない」ことが気になる方はいるはずです。筆者もそうでした。
そこで筆者は、合格発表と同時に物件探しを始め、引っ越したうえで自宅開業しました。「いま住んでいる家で開業できるか」ではなく、「自宅=事務所になる前提で住まいを選び直す」という順序です。オートロックの有無、来客動線、仕事部屋を確保できる間取りなど、事務所としての条件で住まいを決めれば、セキュリティ面の不安はかなり軽くなります。
メリットは通勤ゼロ/デメリットは公私の境目がないこと
自宅開業のメリットとして筆者が最も実感しているのは、出勤時間(移動時間)がないことです。これは想像以上に大きく、朝の時間をそのまま業務や勉強に充てられます。
一方でデメリットは、仕事とプライベートの区別がないことです。サボろうと思えばいくらでもサボれますし、逆に仕事に集中しすぎて気づけば深夜、ということも珍しくありません。オンとオフの切り替えを自分で設計できない人には、自宅開業はしんどい環境になり得ます。
「通勤ゼロは最高。ただし自制心は必須」。これが自宅開業1年目の筆者の率直な感想です。
賃貸事務所・シェアオフィスはどんな人向き?

結論として、賃貸事務所は「採用や来客対応を最初から見込んでいる人」向き、シェアオフィスは「自宅住所を出したくないが固定費も抑えたい人」向きです。ただしシェアオフィスでの税理士登録には事前確認が欠かせません。
※このセクションは一般論としての整理です。筆者は自宅開業のため、賃貸・シェアオフィスの使用体験はありません。
賃貸事務所が向いている人
- 開業当初からスタッフ採用を予定している
- 来所型の相談・記帳資料の預かりなど、対面業務の比重が大きい
- 事務所の「見た目の信頼感」を営業上重視したい
毎月の家賃という固定費を背負う分、「その家賃を払っても回る売上の見込みがあるか」が判断の軸になります。
シェアオフィス・レンタルオフィスの注意点
シェアオフィスは初期費用・固定費とも賃貸より軽く、自宅住所を出さずに済む点が魅力です。ただし税理士の場合、注意点があります。
税理士には守秘義務があるため、共用スペース中心の施設では執務環境として認められない場合があります。契約前の二重確認(税理士会+施設)を強くおすすめします。
事務所選びの判断基準は?開業資金と固定費から逆算する
結論はシンプルで、「固定費を最小で始めて、売上と業務スタイルが固まってから広げる」が失敗しにくい順序です。ひとり税理士としての開業なら、筆者は自宅開業スタートをおすすめします。
開業資金の総額と、毎月耐えられる固定費の上限を決める
業務スタイルを決める(オンライン中心か、来所対応・採用ありか)
オンライン中心・ひとり開業なら自宅開業を第一候補に。来所・採用ありなら賃貸、住所非公開と低コストの両立ならシェアオフィスを検討
自宅開業なら、住所・電話番号の表示変更手続きをセットで行う
開業資金全体の考え方と筆者の実額は、こちらの記事で公開しています。
また、自宅開業を選ぶ場合は「自宅でも業務が快適に回るデスク環境」への投資が、事務所家賃の代わりになる数少ない設備投資です。筆者の実際のPC・モニター・デスク環境は、こちらの完全ガイドにまとめています。
よくある質問
自宅開業だと住所はインターネットに全部公開されますか?
対策をしなければ、日税連の税理士情報検索サイトに事務所所在地(=自宅住所)が掲載されます。ただし自宅兼事務所の場合は、本人の申請により表示を市区町村までに留めることができ、電話番号も非表示にできます(2026年7月時点)。詳細は所属(予定)の税理士会または日税連に確認してください。
シェアオフィスで税理士登録はできますか?
施設や区画の条件によって扱いが異なります。契約前に、所属予定の税理士会へ「その住所で事務所設置が認められるか」を必ず確認し、施設側にも税理士事務所としての利用可否を確認してください。
自宅開業から事務所を借りるタイミングは?
一般論としては、スタッフ採用が必要になったとき、来所型の業務が増えたときが移転検討のタイミングです。毎月の家賃を払っても十分に回る売上見込みが立ってからでも遅くありません。
自宅開業の場合、家賃は経費にできますか?
自宅を事務所として使う場合、業務に使用している部分を合理的な基準(床面積の割合など)で区分して必要経費にする、いわゆる家事按分という考え方があります。具体的な取り扱いは個々の状況によるため、この記事では一般的な考え方の紹介に留めます。
まとめ:税理士の自宅開業はデメリットを知って対策すれば有力な選択肢
税理士の開業場所は、自宅開業・賃貸事務所・シェアオフィスの3択です。自宅開業には「住所・電話番号の公開」「公私の境目がない」というデメリットがありますが、公開範囲は日税連への申請で抑えられ、公私の切り替えは働き方の設計次第です。
ひとり税理士として、オンライン相談を軸に固定費を抑えて開業するなら、筆者は自宅開業をおすすめします。実際に自宅開業した筆者の実感として、通勤ゼロの快適さと固定費の軽さは、開業初期の大きな支えになりました。
自宅開業で快適に仕事を回すためのデスク環境づくりは、こちらの記事でどうぞ。