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顧問先ゼロで開業したら、いつ最初の1件が決まるのか。開業前の筆者が一番知りたかったのは、精神論ではなくこの一点でした。
この記事では、2026年2月に顧問先ゼロに近い状態で開業した筆者が、どのチャネルに手を出し、どれが実際に効いて、どれが空振りだったのかを、成果の有無ごと公開します。数字を盛らずに書くので、期待外れの部分もそのまま載せています。
顧問先ゼロで税理士が開業するのは無謀なのか?
顧問先ゼロからの開業とは、開業日時点で継続的な報酬が確定している契約を持たないまま、税理士事務所を立ち上げることをいいます。結論として、無謀ではありません。ただし「ゼロのまま何もしなければ、何も起きない」という当たり前の前提はついて回ります。
正直に書いておくと、開業税理士である筆者は完全なゼロスタートではありませんでした。2026年2月の開業と同時に、元々の知人から顧問契約を1件、確定申告のスポット業務を1件お預かりしています。ただし、それ以外の見込みはゼロでした。前職からの顧問先の引き継ぎも受けていません。
つまり、手元にあったのは「知人1件」だけで、そこから先をどう広げるかは白紙の状態です。この記事で書くのは、その白紙の部分をどう埋めていったかの記録です。
顧問先ゼロは「営業がゼロから始まる」という意味であって、「売上が立たない」という意味ではありません。
一方で、開業前に注意しておきたいことがあります。開業を伝えると「開業したら税理士をあなたに変更しますね」と言ってくださる方が何人も現れます。筆者も複数の方から言われました。しかし、実際にすぐ税理士変更に至ったケースは一件もありませんでした。関与税理士の変更は相手にとって手間もリスクもある判断なので、当然といえば当然です。
「変更します」は善意の言葉であって、契約ではありません。本契約を結ぶまでは見込み売上に含めない。ここを保守的にしておくと、開業後の資金計画が崩れません。
開業直後の税理士が使える営業チャネルは?

開業直後に現実的に使えるチャネルは、大きく7つに整理できます。先に結論を書くと、筆者にとって早く成果につながったのは「知人・紹介」と「Googleビジネスプロフィール(MEO)」の2つでした。逆に、時間をかけた割に直接の成約に結びつかなかったものもあります。
以下は、開業から2026年7月時点までの筆者自身の手応えを、成果の有無ごとに並べたものです。◎=実際に成約につながった、△=一定の役割はあったが直接の成約には至っていない、×=使っていない、または効果を感じられなかった、という基準です。
※表は横にスクロールできます
開業直後に7つ全部へ手を出すのは、ひとり税理士の時間配分としては現実的ではありません。
特に、紹介会社とマッチングサイトを「顧問先ゼロだから」という理由だけで急いで登録するのは、単価の下がり方を見誤りやすい選択です。件数は確かに作れますが、手数料を差し引いた実質単価で採算が合うかどうかを、登録前に必ず試算してください。
筆者は登録していないので、紹介会社の使い勝手そのものは語れません。ここは体験ではなく、判断の理由として書いています。
顧問先ゼロの税理士が最初にやるべきことは?

着手の順番には理由があります。先に「受け皿」を作り、次に「見つけてもらう仕組み」を整え、最後に「人と会う」。この順にしないと、せっかく興味を持ってもらっても、確認する場所がなくて終わってしまうからです。
事務所HPを用意する
料金の考え方、対応業務、対応エリア、問い合わせ方法を1ページで完結させます。凝ったデザインより、聞かれることが先回りで書いてあるかどうかが重要です。筆者は受験生時代から使っているレンタルサーバーに追加する形で開設したため、新たにかかった費用は新規ドメイン代の2,000円程度でした。作り方と費用はHP・ブログ自作ガイドにまとめています。
Googleビジネスプロフィールを整える
事業所情報を登録し、HPへリンクさせます。地域名で検索したときに表示される場所を先に押さえておきます。
発信の置き場所を決める
ブログかSNSか、どちらを主軸にするかを決めます。両方を毎日やろうとすると続きません。判断材料はブログ・SNS集客の実体験にまとめました。
開業の告知をする
知人・友人・前職の関係者に、開業した事実を伝えます。営業ではなく報告で構いません。筆者の最初の依頼は、この告知がきっかけでした。
人と会う場を絞って選ぶ
交流会や会合は、参加義務と費用を確認してから加入を判断します。全部に出ようとすると時間が溶けます。
営業の前に「調べられたときに答えが用意されている状態」を作るほうが、結果的に近道でした。
開業前後の3か月は、目に見える成果が出ない作業が続きます。筆者もこの期間はHP作成と各種登録、事務作業の自動化にほとんどの時間を使いました。このあたりの実感は開業してから困ったことに詳しく書いています。
ここを飛ばして人と会いに行っても、「で、料金はいくらですか」に即答できるページがないと話が止まります。順番には意味があります。
筆者はどうやって最初の顧問先を獲得したのか?
最初の1件は、開業をSNSで告知したことがきっかけでした。それを見て連絡をくれたのは、高校時代の同級生です。聞けば「開業したらお願いしようと思っていた」とのことでした。こちらが営業を始めるより前に、依頼する側の中では決まっていたことになります。
受注の形は、令和7年分の確定申告のスポットと、令和8年1月分からの顧問契約のセットです。年の途中から関与を始めるのではなく、関与の計算期間を年初に揃えました。決算や申告はその年の全期間が対象になるため、関与範囲を年単位で揃えておくほうが双方にとって整理しやすいからです。
成約までの流れは驚くほど短いものでした。オンラインでの面談を1回、そこで見積もりを提示し、そのまま成約です。何度も足を運んで口説いたわけではありません。もともとの信頼関係に加えて、料金表を先に作っていたことで金額をその場で即答できたのも大きかったと考えています。
「開業したらお願いしようと思っていた」という言葉のとおり、信頼は開業後の営業で作ったものではなく、開業前までの関係の中にすでにありました。開業告知は、それを回収する行為だったのだと思います。
そして、開業から数か月で最も手応えがあったのがGoogleビジネスプロフィール(MEO)でした。地方では、ここに本気で取り組んでいる税理士がほとんどいません。競合が薄いぶん、基本的なことを丁寧にやるだけで検索結果の上位に入りました。
やったのはこの4つだけです。特別な広告費もかけていません。登録手順や設定項目の詳細は税理士のGoogleビジネスプロフィール登録と運用にまとめたので、ここでは「なぜ効いたか」に絞って書いています。
ここで正直に書いておくと、事務所HPを検索で見つけて直接問い合わせをいただいた件数は、現時点でゼロです。無料相談を受け付けていないことも影響していると考えています。それでもHPが不要かというと逆で、問い合わせの入口はGoogleビジネスプロフィール、そこから対応業務や料金の考え方を確認してもらう受け皿がHP、という役割分担で機能しています。受け皿がなければ、地域検索で見つけてもらっても判断材料を渡せません。
地方のMEOは、まだ競合がほとんど参入していない領域でした。
もうひとつ、想定外だったのが対応エリアです。「オンライン対応可」を明示したことで、県外の事業者からも顧問契約をいただけました。事務所の所在地と顧問先の所在地を一致させる必要は、実務上ほとんどありません。地方開業でエリアの狭さを不安に感じている方は、ここを打ち出す価値があります。
2026年7月時点の状況は、顧問契約3件と年1回の申告契約1件、これに加えて交渉中の案件が4件ほどあります。派手な数字ではありませんが、実数としてそのまま公開しておきます。
最初の1件が知人だったことを隠すつもりはありません。ただ、その1件だけでは事務所は成り立たないので、そこから先をどう作るかが本題でした。
開業月が確定申告期と重なるとどうなる?

2月開業には、狙って作れる大きな利点があります。所得税の確定申告期限は原則として翌年3月15日で、2月から3月にかけては申告需要が一年で最も集中する時期だからです。
筆者の最初の受注も、この時期の確定申告スポットでした。そしてスポットで一度お付き合いすると、翌年分から顧問契約へ移行する自然な流れが生まれます。売上がまだ薄い開業初期において、3月に一定の売上が立つことの意味は小さくありません。
官報合格の発表から最速で動けば、同じ状態を意図的に作れます。
登録手続きには時間がかかるため、合格後にゆっくり準備を始めると、この時期を1年分まるごと逃すことになります。開業月を「なんとなく」で決めてしまうのは、初年度の売上構成に直接響く判断です。開業までの全体の流れは税理士開業の完全ロードマップにまとめています。
筆者の場合は結果的にこのタイミングになりましたが、これから開業する方は狙って合わせられます。もったいないので、ぜひ計算に入れてください。
顧問先ゼロのときにやらないほうがいい営業は?

顧問先がゼロだと、目の前の話に飛びつきたくなります。しかし、開業初期に取った契約は数年単位で事務所に残るため、ここで判断を誤ると後から効いてきます。筆者が意識的にやらなかったことを挙げます。
単価を下げない理由は単純で、ひとり税理士が対応できる件数には物理的な上限があるからです。安い契約で枠が埋まると、後から良い案件が来ても受けられません。この判断の背景は開業してから困ったことに詳しく書いています。
では実際にいくらに設定したのか。金額の決め方と料金表の作り方は、顧問料はいくらにする?開業税理士が料金表を作った手順と判断基準にまとめています。
交流会については、一度だけ参加しました。ただし本会員になると月1回の参加義務が生じる形式だったため、費用対効果と時間対効果を考えて加入は見送っています。一方で、地域で人と会うことを仕事にしている方(保険や飲食など)は人脈のハブになっていることが多く、そうした方を介した他士業との集まりのほうが、現実的につながりやすいと感じました。
営業の場は「数」ではなく「誰と繋がれる場か」で選ぶほうが、時間の使い方として効率的でした。
SNSについても補足しておきます。毎日更新を無理に続ける必要はありません。筆者の実感では、SNSから来るのは気軽な問い合わせのDMが中心です。本気で契約を検討している方は、Googleビジネスプロフィールから事務所HPの内容を確認したうえで、問い合わせをくださいます。
やらないことを決めておくと、迷う時間が減ります。開業初期は判断の回数そのものが負担になるので、これは想像以上に効きました。
問い合わせが来ても成約しないときはどうする?
問い合わせが増えても、そのまま成約に直結するわけではありません。筆者の場合、2026年7月時点で月に1〜2件の問い合わせがありますが、成約に至らないケースのほうが多いのが実情です。
理由として多いのは「思っていたより高い」というものと、「税務調査の対応だけをお願いしたい」といった、こちらの受任方針と合わないものです。前者は価格の問題、後者は範囲の問題で、性質がまったく違います。
成約率が低いこと自体は、必ずしも問題ではありません。問題は、理由を記録していないことです。
ここで単価を下げれば成約率は上がります。しかし前述のとおり、下げた単価で埋まった枠は簡単には戻せません。成約しない期間に耐えられるかどうかは、営業力ではなく資金計画の問題です。開業前にどの程度の余力を持っておくべきかは税理士の開業資金にまとめています。
断られた記録は、あとから読み返すと自分の価格設定や打ち出し方の癖が見えてきます。落ち込む前に、まず書き残すことをおすすめします。
顧問先ゼロで開業して、最初の1件まではどれくらいかかりますか?
筆者の場合は開業と同時でしたが、これは元々の知人からの依頼だったためで、一般化はできません。知人からの依頼がない前提であれば、HPとGoogleビジネスプロフィールを整えてから数か月単位で考えておくほうが現実的です。
開業直後は顧問料を安くして件数を集めるべきですか?
筆者は取りませんでした。ひとり税理士が対応できる件数には上限があるため、安い契約で枠が埋まると後から調整が効きません。件数ではなく、対応できる範囲での採算を優先しています。
営業に使える予算がほとんどありません。何から始めるべきですか?
事務所HPとGoogleビジネスプロフィールです。Googleビジネスプロフィールは無料で、HPにかかるのはサーバー代とドメイン代だけです。筆者は受験生時代から使っているサーバーに追加する形で開設したため、実際にかかった費用は新規ドメイン代の2,000円程度でした。筆者が最も早く手応えを感じたのもこの2つです。
税理士紹介会社は開業直後から使うべきですか?
筆者は登録していないため使用感は語れませんが、判断材料としては手数料を引いた実質単価で採算が合うかどうかを先に試算することをおすすめします。件数は作れても、単価の設計が崩れると後から戻しにくくなります。
地方だと顧問先が見つからないのではないですか?
筆者は地方で開業していますが、県外の事業者からも顧問契約をいただいています。「オンライン対応可」を明示することで、対応エリアの制約はかなり緩和できます。
まとめ|税理士は開業時に顧問先ゼロでも営業は組み立てられる
税理士が開業時に顧問先ゼロであることは、それ自体が致命的な問題ではありません。重要なのは、限られた時間をどのチャネルに配分するかです。
筆者の実感では、開業直後に効いたのは「知人への開業告知」と「Googleビジネスプロフィール」でした。事務所HPを検索で見つけて直接問い合わせ、という経路は今のところゼロですが、Googleビジネスプロフィールから内容を確認してもらう受け皿としては機能しています。逆に、紹介会社やマッチングサイトには手を出さず、交流会も費用対効果で見送りました。
そして、成約しない期間を耐えるための資金計画があってはじめて、単価を下げない判断ができます。営業の話に見えて、実際は資金の話でもあるということです。
なお、実際の売上金額や顧問料の水準といった生の数字は、本ブログでは扱わず、noteで公開しています。
開業半年の売上・経費・資金繰り|税理士の実数記録