開業税理士の筆者が開業前に力を入れたのは、税法の勉強ではありませんでした。準備したのは、顧問契約書・スポット業務の契約書のひな形、消費税の届出などの前に顧問先から取る同意書、そして守秘義務や報酬の受け取り方といった事務所のルールです。
契約書などを開業前にテンプレートにしておいたので、開業後すぐにスポット契約・顧問契約を結べました。
この記事では、税理士が開業前に何を勉強すべきかを、開業税理士である筆者が実際に準備したものから整理します。
税理士は開業前に何を勉強すべき?筆者の答えは「税法より契約書と事務所のルール」

筆者の答えは、税法より先に「契約書」と「事務所のルール」を準備することです。税法は実務で学んだ基礎とその都度の調べで対応できますが、契約書やルールは開業した日から自分で用意しておく必要があるからです。
顧問契約書とは、税理士が継続して税務顧問を引き受けるときに、業務の範囲などを顧問先と取り決めておく契約書です。
※スマホでは表を横にスクロールできます。
| 分野 | 筆者が開業前にしたこと |
|---|---|
| 契約書 | 顧問契約書・スポット業務の契約書のひな形を作った |
| 賠償リスク | 消費税の届出などの前に、顧問先から同意書を取る運用を決めた |
| 事務所のルール | 守秘義務・個人情報の管理・反社会的勢力の確認・前払い・AI活用への同意を決めた |
| 税法 | 開業前にあらためて勉強し直すことはしなかった |
税法の知識より先に、開業した日から使うものを先に準備しておく、という考え方です。開業全体の流れは、税理士開業の始め方(合格から開業初年度までの全手順)でまとめています。
契約書などは、開業前にテンプレートにしておきました。
なぜ税法の勉強は開業前にやらなくてよかった?
税理士試験ほど複雑な論点には、実務で頻繁に出会うわけではないからです。筆者は、実務で学んだ基礎と、必要になったときにその都度調べることで対応できています。
税法の勉強が不要という意味ではありません。開業前にまとめて勉強し直すのではなく、必要になったときに調べるという順番にした、ということです。
試験ほど複雑な論点には、実務ではそう頻繁に出会いません。
開業前に作った契約書は?顧問契約書とスポット業務の契約書

筆者が開業前に作ったのは、顧問契約書とスポット業務の契約書の2つです。どちらにも、業務の範囲と、業務にAIを使用することを書いています。
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| 契約書 | 使う場面 | 書いた項目(一部) |
|---|---|---|
| 顧問契約書 | 継続して顧問を引き受けるとき | 業務の範囲、AIを使用する旨 |
| スポット業務の契約書 | 単発の業務を引き受けるとき | 業務の範囲、AIを使用する旨 |
契約書には、業務の範囲とAIを使うことを明記しています。筆者のAIの使い方と、守秘義務との線引きは、ひとり税理士のAI業務効率化の記事で書いています。
契約書には、業務の範囲とAIを使うことを書いています。
賠償リスクにどう備えた?消費税の選択は同意書を取ってから

消費税の届出や計算方法の選択は税務リスクが高いと考え、顧問先から同意書を取ってから、届出書の提出や選択をする運用にしました。同意書は、電子契約サービス(マネーフォワード クラウド契約)で取っています。
同意書の対象にしている選択と、国税庁の資料で確認できる注意点は次のとおりです(2026年9月時点)。
※スマホでは表を横にスクロールできます。
| 選択すること | 国税庁の資料で確認できる注意点 |
|---|---|
| 簡易課税制度を選ぶか | 原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する(事業を開始した日の属する課税期間は、その課税期間中)。やめる場合の届出書は、原則として、選択の効力が生じた日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ提出できない |
| 個別対応方式か一括比例配分方式か | 一括比例配分方式を選んだ場合は、2年間以上続けて適用した後でなければ、個別対応方式に変更できない |
一度選ぶと、原則として2年間は元に戻せないものがあります。だからこそ、筆者は提出や選択の前に同意書を取るようにしています。
税理士賠償責任保険(税賠保険)の補償内容と保険料は、税賠保険の記事で筆者の実例を書いています。
消費税の選択は、提出の前に同意書を取るようにしています。
事務所運営で決めたルールは?

筆者は開業前に、守秘義務、個人情報の管理、反社会的勢力の確認、スポット業務の報酬の前払い、AI活用への同意の5つのルールを決めました。
守秘義務は、税理士法第38条で定められている義務です。報酬については、スポット業務の報酬は原則前払いと決めています。
5つのルールは、開業前に決めておきました。
開業前にテンプレート化して何が変わった?
契約書などを開業前にテンプレートにしておいたので、開業後すぐにスポット契約・顧問契約を結べました。
準備を開業前に済ませておいたことで、開業後すぐに契約を結べたのが一番の違いです。お金・人脈・スキルなど、ほかに開業前にやってよかったことは、開業前にやってよかったこと・やらなくてよかったことでまとめています。
開業後すぐに、スポット契約も顧問契約も結べました。
契約書の勉強に使った本は?
契約書のひな形を作るときに参考にしたのは、税理士事務所の法務とトラブル事例を扱った2冊です。軽く通読したうえで、NotebookLMを使って、自分の契約書PDFを本の内容に沿って見直しました。
本を最初から最後まで精読するのではなく、NotebookLMで自分の契約書を見直したのが筆者の使い方です。
本は軽く通読して、契約書の見直しに使いました。
よくある質問
税理士は開業前に税法を勉強し直すべきですか?
筆者はしませんでした。税理士試験ほど複雑な論点には実務で頻繁に出会わず、実務で学んだ基礎と、その都度調べることで対応できているためです。
開業前に契約書を用意しておく必要はありますか?
筆者は開業前に顧問契約書とスポット業務の契約書をテンプレートにしておき、開業後すぐにスポット契約・顧問契約を結べました。
消費税簡易課税制度選択届出書は、いつまでに出しますか?
2026年9月時点の国税庁の資料では、原則として、適用を受けたい課税期間の初日の前日までです。事業を開始した日の属する課税期間は、その課税期間中に提出します。
顧問先からの同意書は、どうやって取っていますか?
電子契約サービスのマネーフォワード クラウド契約で取っています。
まとめ:開業前は、税法より「開業した日から使うもの」を準備する
開業税理士の筆者が開業前に準備したのは、税法の勉強ではなく、開業した日から使うものでした。
- 顧問契約書とスポット業務の契約書に、業務の範囲とAIを使う旨を書いた
- 消費税の届出や計算方法の選択は、同意書を取ってから行う運用にした
- 守秘義務・個人情報・反社会的勢力の確認・前払い・AI同意のルールを決めた
- テンプレート化しておいたので、開業後すぐに契約を結べた
開業前後に読んだ本は、開業税理士の本棚にまとめています。