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税理士登録の準備を進めていると、どこかの段階で「事務所の名前をどうするか」という問題にぶつかります。せっかく独立するのだから、覚えてもらいやすい名前にしたい。そう考えて何日も悩む人は少なくありません。
ただ、開業税理士として登録する場合、事務所の名前を自由に考える余地は、実はほとんどありません。日本税理士会連合会が公開している登録の手引に、書き方が指定されているからです。
筆者自身も、登録申請書を書くときにこの欄と向き合いました。結論から言えば、悩みませんでした。早く登録を済ませたかったので、指定された形をそのまま採用しています。
この記事では、事務所の名前がいつ・どのように決まるのかを、根拠となる資料を示しながら整理します。名前選びに時間を使うより、先に進んだほうがいい理由がわかるはずです。
税理士事務所の名前はいつ決まる?

事務所の名前が確定するのは、開業日でも、看板を出す日でもありません。税理士登録申請書を書いて提出した時点です。申請書に記入した名称が、そのまま税理士名簿に登録されます。
税理士法第18条は、税理士となるには税理士名簿に氏名・生年月日・個人番号・事務所の名称及び所在地などの登録を受けなければならないと定めています。つまり事務所の名称は、任意の呼び名ではなく登録事項そのものです。
出典:税理士法(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
具体的には、税理士登録申請書(第1号様式)の4-1、「4 税理士事務所の予定」という欄に名称と所在地を記入します。開業税理士として登録する人は、この欄を埋めた時点で事務所名を決めたことになります。
そして、この申請書を提出してから登録が決定するまでには、税理士会での調査、税務署等への副本送付、日税連での審査を経るため、おおむね2か月から3か月の期間がかかります。名前で1週間悩めば、その分だけ登録日が後ろにずれる可能性があるということです。
登録申請そのものの流れは別記事で詳しくまとめています。書類の準備状況によって申請時期が変わるため、名前を考える前に全体像を把握しておくと迷いが減ります。
関連記事:税理士登録の流れを解説|必要書類・面接・登録までの期間
「開業してから考えればいい」と思っていると、申請書の欄で手が止まります。決めるのは申請書を書く日です。
事務所の名前に法律上のルールはある?
税理士事務所とは、税理士が税理士業務を行うための本拠として設ける事務所のことです。税理士法第40条第1項は税理士に事務所の設置を義務づけ、同条第2項で、その事務所は税理士事務所と称すると定めています。
つまり「税理士事務所」という言葉自体が法律上の呼称です。「事務所」の部分を自由な言葉に置き換えることは想定されていません。
あわせて、同条第3項では税理士事務所を二つ以上設けてはならないとされています。自宅と別に借りた部屋の両方で連絡先を表示するようなケースは、二か所事務所と判断される可能性があります。
なお、日税連の登録の手引では、住所貸しサービスのように実態のない場所や、他者とオフィス環境を共有するコワーキングスペースは、税理士事務所として適当ではないとされています。名前より先に、そもそも事務所として認められる場所かどうかを確認するほうが重要です。
名前の相談より、場所の相談のほうが登録調査では時間を取られます。所在地の要件を先に潰しておくのが近道です。
「○○会計事務所」のような屋号は使える?

開業税理士として登録する場合、事務所の名称は原則として2つの形のどちらかです。自由な屋号を考える余地は、登録申請の場面ではほぼありません。
日本税理士会連合会の「税理士登録の手引」(令和8年5月改訂)に掲載されている登録申請書の記入例には、開業税理士となる場合の記載要領として「(氏名)税理士事務所」又は「税理士(氏名)事務所」とすることが明記されています(同手引P34・2026年8月時点)。
| 名称の形 | 登録申請での扱い |
|---|---|
| 田中太郎税理士事務所 | 手引が示す形(氏名+税理士事務所) |
| 税理士田中太郎事務所 | 手引が示す形(税理士+氏名+事務所) |
| 田中会計事務所 | 手引が示す2つの形に当てはまらない |
| さくら総合税務事務所 | 同上 |
| TANAKA Tax Office | 同上 |
世の中には氏名を含まない名称の会計事務所も存在しますが、それらは税理士事務所としての登録名称とは別に用いられている呼称であったり、過去の取扱いによるものであったりします。これから登録する人が参考にできる前例ではありません。
もうひとつ、所在地の書き方にも指定があります。手引では、事務所の所在地欄に「○○税理士事務所内」「○○税理士法人内」という表記は認められないとされています。勤務先の事務所に机を置いたまま開業登録する、という形は想定されていません。
本記事は一般的な情報提供であり、個別の登録可否を判断するものではありません。実際の申請にあたっては、提出先となる税理士会の案内を必ず確認してください。
筆者も「氏名+税理士事務所」の形にしました。選んだというより、指定されている形をそのまま書いた、というのが正確です。
2択の中で自分が決められることは?
名称の骨格が決まっているとはいえ、まったく選択肢がないわけではありません。決められるのは主に3点です。悩むならここだけに時間を使えば十分です。
語順を決める
「(氏名)税理士事務所」と「税理士(氏名)事務所」のどちらにするかを選びます。前者のほうが一般的で、五十音順の名簿や名刺での見え方も自然です。
氏名の表記を確認する
氏名は住民票や身分証明書に記載されているとおりの字体で記入します。旧字体や異体字がある人は、普段使っている表記と登録上の表記がずれていないか確認しておきます。
旧姓を使うかどうかを決める
婚姻や離婚などで戸籍上の氏が変わった人は、日税連の承認を受けることで旧姓を使用できます。希望する場合は登録申請書と併せて旧姓使用承認申請書を提出します。
旧姓使用については注意点があります。承認を受けた場合、税理士業務で使用する姓はすべて旧姓になります。場面ごとに旧姓と現姓を使い分けることはできません。
出典:日本税理士会連合会「税理士登録の手引」(令和8年5月改訂)https://www.nichizeiren.or.jp/prospects/entry/howto/
ブランディングを考えたい気持ちは理解できますが、事務所名で差をつけられる余地は構造的に小さい、というのが実際のところです。名前ではなく、発信の内容や対応の速さで覚えてもらうほうが現実的です。
名前で悩んだ時間は、そのまま登録が遅れる時間になります。ここは早く抜けたほうが得です。
ドメインやホームページはいつ準備する?

事務所名が決まると、次に気になるのがドメインとホームページです。結論としては、準備は登録前に進めてよいが、公開は登録が決定してからになります。順番を間違えると法令違反になりかねません。
日税連の登録の手引では、登録が決定するまでの間の注意点として、名刺・あいさつ状などの印刷物、インターネットのホームページ、SNSなどで、税理士や税理士事務所、これらに類する名称を使用しないこととされています。これは税理士法第52条(税理士業務の制限)および第53条(名称の使用制限)に関わるためです。事務所予定地に「税理士」の看板を掲げることも同様です。
つまり、登録決定前に「○○税理士事務所」というサイトを公開してはいけない、ということです。
一方で、ドメインの取得やサイトの構築そのものは制限されていません。むしろ、登録決定を待ってから作り始めると、営業を始められる状態になるまでにさらに時間がかかります。次の順番で進めるのが現実的です。
事務所名を確定させる(申請書を書く時点)
名称が決まらないと、そもそもドメイン候補を絞れません。
ドメインを取得する
氏名を含む事務所名に対応したドメインが取得できるかを確認します。取得しただけでは何も公開されません。
サイトを非公開のまま構築する
WordPressをインストールし、検索エンジンにインデックスさせない設定のまま中身を作り込みます。
登録決定後に公開する
登録通知を受け取り、税理士証票の交付を受けてから公開に切り替えます。
事務所のホームページやブログを自分で作る場合の全体の費用と手順は、こちらにまとめています。
関連記事:税理士事務所のHP・ブログを自作する完全ガイド【総費用と手順】
サイトは作っておいて、公開ボタンだけ登録後に押す。この段取りにしておくと待ち時間を無駄にしません。
事務所の名前はあとから変えられる?
変更できます。税理士名簿の登録事項に変更が生じた場合は、所属税理士会を経由して、遅滞なく変更登録申請書を提出することとされています。事務所そのものを移転する場合は、変更登録申請に関する届出書も併せて提出します。
ただし、手続きができることと、変えるのが簡単であることは別です。名称を変えると、事務所名が載っているものすべてに波及します。
特に、ドメインを変えると検索評価の積み上げが実質ゼロに戻ります。ホームページで集客するつもりなら、ここは軽視できません。
なお、税務署に提出する開業届の屋号欄や、Googleビジネスプロフィールに登録する名称も、事務所名と揃えておくのが基本です。それぞれの手続きは別記事で扱っています。
関連記事:税理士自身の開業届・青色申告・インボイス登録まとめ
関連記事:税理士のGoogleビジネスプロフィール登録と運用|住所を出さずに地域集客する方法
変えられるけれど、変えると面倒。だからこそ、最初に無難な形を選んでおくのは悪い判断ではありません。
税理士事務所の名前は自由に決められますか?
開業税理士として登録する場合、日税連の登録の手引では「(氏名)税理士事務所」または「税理士(氏名)事務所」とすることが示されています。屋号を自由に考える余地は、登録申請の場面ではほとんどありません。
「○○会計事務所」という名前で登録できますか?
手引が示す2つの形には当てはまりません。既存の事務所に氏名を含まない名称が見られることはありますが、これから登録する人が参考にできる前例ではありません。判断に迷う場合は提出先の税理士会に確認してください。
事務所の名前はいつまでに決めればいいですか?
税理士登録申請書を作成する時点です。申請書の「税理士事務所の予定」欄に記入した名称が、そのまま税理士名簿に登録されます。
結婚して姓が変わりましたが、旧姓で登録できますか?
日税連の承認を受けることで旧姓を使用できます。登録申請書と併せて旧姓使用承認申請書を提出します。ただし承認された場合、税理士業務で使用する姓はすべて旧姓になります。
登録前にホームページを公開してもいいですか?
登録が決定するまでは、ホームページやSNS、名刺に、税理士や税理士事務所、これらに類する名称を使用できません(税理士法第52条・第53条)。サイトの構築までは進められるので、公開だけ登録決定後に行う段取りが現実的です。
まとめ|税理士事務所の名前の決め方は「悩まない」が正解
税理士事務所の名前の決め方を整理すると、次のようになります。
- 名称が確定するのは登録申請書を書く時点で、開業日ではない
- 開業税理士の事務所名は「(氏名)税理士事務所」または「税理士(氏名)事務所」が手引の示す形
- 自分で決められるのは語順・氏名の表記・旧姓使用の3点
- ドメインとサイトは登録前に準備し、公開だけ登録決定後に行う
- 変更はできるが、印刷物からドメインまで波及するため負担が大きい
筆者は、早く登録したかったので迷わず氏名を冠する形にしました。振り返っても、この判断で失ったものはありません。事務所名で選ばれることは、少なくとも開業初期にはほとんどないからです。
名前に使うはずだった時間は、事務所の場所の要件を固めることと、公開できる状態のホームページを準備しておくことに回したほうが、結果的に早く動き出せます。
事務所のホームページ・ブログを自分で作る手順と総費用は、こちらのガイドにまとめています。登録決定を待っている期間にこそ進められる作業です。
関連記事:税理士事務所のHP・ブログを自作する完全ガイド【総費用と手順】
本記事は2026年8月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供です。個別の登録可否については、提出先となる税理士会にご確認ください。